「知ってるよ。この前、玄関でちょこっとお話したもーん」
気持ち悪く唇をとがらせると、曽我は余裕の態度でちらりと秀幸の反応を見る。
「お前のことどう思ってるのか知りたくてちょっと試すようなこと言ってみたら、案の定だよ。あの子さ、なよっちくみえて、お前のためならなんでもやるな。すげー惚れられてんじゃん。お前も憎からず思ってんだろ? お前さ、あんだけ真剣に想ってくれてる相手に、なんで膝のことちゃんと話さねえの?」
あんたに言えたことかよ、叫びたい気持ちをぐっとこらえた。
「俺は卑怯でいいんです。卑怯でも、今を生きのびることに意味があるんですよ」
自分でも思わぬ言葉が出た。曽我が一瞬、ぽかんとする。
「生き延びる? なにそれ、意味わかんねーんだけど。つきあったら死んじゃうとでも思ってんの? あのさ、俺もこの寮の連中も、いっつも下品な下ネタで笑いあってるけどさ。それは、本気で誰も彼もバカにしてんじゃなくって、そうすることで、自分たちの恋愛経験値が足りないのを自虐にしてるだけ。仲間の真剣な恋愛をクサすような性根の腐った連中じゃあねえよ。お前もそろそろ、腹の内見せてくれてもいいんじゃねーの?」
ほんとよくわかんねえんだよなお前たち、曽我は馬鹿にするように小さく肩をすくめた。
「俺達のことはほっといてください。だいたい……あんたはなんでそんな余計なことしてくれるんすか!」
曽我は、ふっ、とため息混じりに笑った。それは今まで見たことのない、自嘲するような笑い方だった。
「結局、俺にはこれしかできねえからなあ。顔に一撃くらって一線を退いたくせに、まだラグビーに関わりたい、なんて未練たらたらの俺にはさ。お前らが悔いなく活躍できるように、裏でできる限りのお膳立てすることくらいしかしてやれねえからな。現役に腰痛い、膝痛いって泣かれたって、俺がかわってやるわけにもいかねえし」
気持ち悪く唇をとがらせると、曽我は余裕の態度でちらりと秀幸の反応を見る。
「お前のことどう思ってるのか知りたくてちょっと試すようなこと言ってみたら、案の定だよ。あの子さ、なよっちくみえて、お前のためならなんでもやるな。すげー惚れられてんじゃん。お前も憎からず思ってんだろ? お前さ、あんだけ真剣に想ってくれてる相手に、なんで膝のことちゃんと話さねえの?」
あんたに言えたことかよ、叫びたい気持ちをぐっとこらえた。
「俺は卑怯でいいんです。卑怯でも、今を生きのびることに意味があるんですよ」
自分でも思わぬ言葉が出た。曽我が一瞬、ぽかんとする。
「生き延びる? なにそれ、意味わかんねーんだけど。つきあったら死んじゃうとでも思ってんの? あのさ、俺もこの寮の連中も、いっつも下品な下ネタで笑いあってるけどさ。それは、本気で誰も彼もバカにしてんじゃなくって、そうすることで、自分たちの恋愛経験値が足りないのを自虐にしてるだけ。仲間の真剣な恋愛をクサすような性根の腐った連中じゃあねえよ。お前もそろそろ、腹の内見せてくれてもいいんじゃねーの?」
ほんとよくわかんねえんだよなお前たち、曽我は馬鹿にするように小さく肩をすくめた。
「俺達のことはほっといてください。だいたい……あんたはなんでそんな余計なことしてくれるんすか!」
曽我は、ふっ、とため息混じりに笑った。それは今まで見たことのない、自嘲するような笑い方だった。
「結局、俺にはこれしかできねえからなあ。顔に一撃くらって一線を退いたくせに、まだラグビーに関わりたい、なんて未練たらたらの俺にはさ。お前らが悔いなく活躍できるように、裏でできる限りのお膳立てすることくらいしかしてやれねえからな。現役に腰痛い、膝痛いって泣かれたって、俺がかわってやるわけにもいかねえし」

