※   ※   ※

「何か用すか」

 秀幸がミーティングルームの扉を開けると、高々と足を組んで煙草をふかす曽我以外誰もいなかった。

 風呂上がりに「曽我さんが話があるそうです」と後輩が呼びに来た。いぶかしみながら来てみるとこれだ。曽我があえて他の連中をおいはらったのだろう。

 個人面談かよ、と内心でつっこみながらも扉を閉め、素直に曽我の前に立った。

「相変わらず、愛想ないねー小野寺ちゃん。ガラスのコップ握りつぶし事件、きいたよ」

 曽我はにんまり笑った。面白がっている。

「だから、あれは近藤さんが言ったとおり、誰が触ってもぶっ壊れるコップだったんですよ」
「でも、一、二年はすっげーびびっちゃって、『うちの部にはガラスのコップを素手で握り潰す先輩がいる』って学校でふれまわってるらしいよ」
「どんな部なんすか」

 あきれていると、座れば、とうながされた。手近な椅子を引き寄せて、曽我の前に座る。

 腰を下ろした途端に目の前の机にぽん、と投げ出されたのは七色に光る銀色の円盤だった。その表面に書いてあるタイトルは、ゲイ向けのアダルトビデオであるらしかった。

 秀幸は眉をひそめて、真意をさぐるように曽我の顔を見た

「うちの卒業生が出てる。明るみに出たらスキャンダルかも」
「なにが言いたいんすか」
「俺が沈めちゃったんだよね、こいつ」