「失礼します」

 秀幸は、きっ、と唇を引き結び南条の前から去った。早足で廊下を歩き、階段を上がる。

 ここで茅野をオカマ呼ばわりさせたりはしない。ここは彼が唯一、安心して眠れる場所だ。

(守ってやる)

 秀幸は、石ころのように固くむすんだ心を握りしめて階段をあがっていった。