君の膝の骨になりたい

 取り残された秀幸は床にすわったまま、しばらくぼう然としていた。

「……津和野くん、すごくいい子だね」

 ふいに沈黙が破られた。茅野の声だ。起きていたのだろうか。

「……僕は、津和野くんがうらやましい。秀幸といつも一緒に暮らせる津和野くんがうらやましい」

 ひでゆき、と下の名前で呼ばれて、どきりとした。

「秀幸、大学出たら一緒に住もうよ。毎日一緒にご飯食べて、秀幸の側で眠るんだ」

 夢見るようにつぶやく。秀幸は、腹の底をしぼられるようにせつなくなった。

 二段ベッドのはしごを登る。

「穂(みのる)、俺も眠くなってきた。一緒に入れて」

 半分目を閉じた茅野が、横向きになって壁側に身を寄せる。秀幸は白い木綿のカバーのかかった布団をめくった。茅野のフラノのズボンが見えた。隣に身を横たえると、茅野の存在感が、そこで秀幸を待ち構えていたようにからめとった。気配も、匂いも、体温も。くらりと秀幸も目を閉じた。

「人のあたためた布団って、こんなにやわらかいんだな」

 ずっと待っていたのかもしれない、と思った。こうしていつか秀幸が一つのベッドに忍びこんでくるのを。

 脚の裏側に膝をそわせ、後ろから抱きしめるように添い寝した。茅野の体は、まるでどこかで深く愛し合ったことがあるかのように、しっくりとくる抱き心地だった。痩せた男の背中を抱いているだけなのに、いとしい想いだけが、どこからかこんこんとわきでてくる。湧水のようにくみあげる暇もなくあふれては二人を透明にひたしていく。