君の膝の骨になりたい

「症状をきいて俺がネットで検索しただけだけど。たぶん、こいつは睡眠障害と呑気症。自分の家にいるとつらいんだ。でも――」

 そこで秀幸は、膨らんだ布団をながめた。布団の山が規則的に上下して、茅野のやすらかな呼吸を伝えている。

「それでも、なぜか俺の前ではニコニコしてすごく食べるんだよ。睡眠導入薬、飲まなくてもぐっすり眠るんだよ」

 語尾が震えた。そんな茅野が愛おしくて仕方ない。守ってやりたくてどうかなりそうになっているのだ。

 もう限界なのだろう。瑕疵のない真珠のような寝顔を見せながら、その裏側では家族の期待に応えるため努力し続け、身も心も壊れかけている。
 突然胸の上に重い物を載せられたように、ぎゅっと肋骨の奥が痛む。津和野の前だと意識していないと泣いてしまいそうだ。

 津和野が困り顔で微笑んだ。

「だから小野寺さん、わざとステーキとか食べに行ってるんすね。少しでも栄養があってハイカロリーなもの、茅野さんに食べさせたいんですね。そんで、ここで毎週茅野さん寝かせるんですね」

 そして、なあんだ、とつぶやき立ちあがった。自分のタンスから着替えのTシャツとタオルを出す。

「俺、今から上の筋トレルーム行ってきます」
「は? 今日は練習オフだろ?」
「いやもう、そんな話聞いてここにいられるほど、俺野暮じゃないっすよ」
「お前、何言って……」
「じゃ、ごゆっくり」

 あいかわらず愛嬌のある顔でにやりと笑うと、出ていってしまった。