君の膝の骨になりたい

「いや、掃除しろって言ってんじゃなくって。食べかた。俺も知らなかったんだけどさ」

 秀幸は、津和野の隣に腰を下ろして、スナック菓子をひとつつまんだ。津和野が見守る中、口元へ運び一口前歯で噛んだ。そのまま唇を離さず口から息を吸うと、掃除機のように細かい破片が秀幸の口の中へ吸いこまれていく。

「ほら、な」
「なんすかその食べ方」
「こいつ、そうするんだよ。俺もそんなことする奴、初めて見たけど」

 ベッドの茅野を二人で見上げる。

「きっとガキの頃から、まわりに食べこぼすなって厳しく言われて、こんな食べかたマスターしたんだろうな。そういやこいつ、昔はフライドチキンも食べられなかったんだよな。手が汚れるし、食べかすが汚いから人前で食べたくない、とか言って」
「潔癖症なんすか」

 秀幸は静かに笑った。

「いや、潔癖症だったら、俺の汗臭い布団なんかで寝られないだろ。たぶん周囲の人が潔癖というか完璧主義で、それを押しつけられて育ったんだろう」
 津和野が眉間にしわを寄せた。

「なんか……つらそうっすね」
「津和野、呑気症(どんきしょう)って知ってる?」
「あ、ドンキ? 呑気症?」
「ストレス性神経症の一種なんだ。ストレスを感じると、腹の中に空気を飲みこんでしまう。それで胃の中も食道もぱんぱんになって苦しくて、吐き気すら感じるんだけど、中身は空気だからべつに吐きはしない。でも、胃の圧迫感でメシは満足に食べられないんだ」
「茅野さん、それなんですか」

 秀幸はうなずいた。