緑道の柵に巻きついたテッセンのつるが、丸い綿毛を実らせていた。棒つきキャンディーのような球体の綿毛は、茅野がすぐそばを通ると、ふわり、とはかなく崩れて舞い落ちる。

 ふいに近くの樹のこずえから鳥の声がした。ピーピー、チュクチュクチュク、とせわしなく鳴いている。秀幸は目線をあげた。鶯色の小鳥。メジロだろうか。

 その時、少し先で茅野が立ちつくしているのが見えた。体が震えている。

 土をかためた歩道に、まだ尾羽が短くずんぐりとしたメジロがうずくまっていた。幼鳥だ。

「あーあ、巣立ちに失敗したな」

 秀幸はさっと茅野の前へ出ると、かがんで手を出した。ひな鳥は逃げようとあわてて羽ばたいたが、五十センチほど飛ぶとすぐに着地してしまった。

「まだ飛べないくせに、巣を飛び出した無謀なやつだな」

 驚かさないようにそっと近づき、手の平にすくいあげた。

 頭上で親鳥がうるさく鳴いている。

「ここじゃ、ノラ猫にやられちゃうからな」

 言い訳のように言って、ひな鳥を近くの大きな樹にとまらせてやった。足はしっかりしている様子だから、これで大丈夫だろう、と秀幸は思った。

 さっと親鳥が降下して、ひな鳥のとまった樹にとまる。こんもり茂ったキンモクセイの木は、すでに控えめに花をつけていた。あとは、親鳥が安全な場所に誘導するなり、守るなりするのだろう。

 やれやれ、と秀幸がふりかえると、茅野が腰を抜かしたように座りこんでいた。