秀幸は、病院の壁にたれ下がるポトスのフェイクグリーンをみつめた。ハート型の葉がつやつやと連なってエアコンの風にかすかにそよいでいる。それを空虚な思いでみつめた。

 膝が使いものにならなくなって選手をやめ、マネージャー業もできないとなれば、自分に残された道はなんなのだろう。寮を去るしかないのだろうか。どこかの夜逃げ部員のように、退部届けだけを残して出奔すればいいのだろうか。大学も辞めて、のこのこ実家に帰ればいいのだろうか。

 はあ、と小さなため息をつく。

 今、茅野に会いたい、彼の可憐な笑顔が見たい、となんの脈絡もなく考えていた。