「俺はっ」
いらだちをぶつけるように声を荒げると、長谷川は、にこっと笑った。
「俺みたいにはなりたくないんだろ?」
なんでもないことのように。
長谷川も前は選手だった。二年の時に肩の亜脱臼を悪化させて骨をボルトでとめる手術を受けたものの、試合中にもう一度脱臼を起こした。
金属ボルトが肩の内部で折れ、関節をはめることもできずに病院の処置室に入るまで七転八倒した。長谷川の尋常ではない痛がりかたに驚き、青ざめたまま動けずにいる女子マネージャーたちをおしのけて救急車につきそいとして乗りこんだのは秀幸だった。試合のために着ていたジャージをベンチに脱ぎ捨てて車内に上がり、脂汗をかいてのたうちまわる長谷川をストレッチャーの脇で励まし続けた。
そして長谷川は、この病院で二度目の手術を受けたあと、選手からマネージャーに転向したのだった。
「これからは裏方でみんなをサポートすることにするよ」
退院してきたその日に寮のみんなに宣言した。そんな長谷川にどう接していいのか、当時の秀幸は戸惑っていた。
その後の長谷川は、筋トレルームでは記録係に徹し、グラウンドを走ることもなくなった。彼の体はみるみるたるんで、今や現役の頃の見るかげもなくなっていた。主務はミーティングの議事録作成や会計帳簿の管理などデスクワークが多いのだ。
秀幸は寮の風呂場で長谷川の裸を直視することができなかった。彼の脇の下から肩上にむかって赤くみみず腫れのようにもりあがった手術痕。そして中年のように脂肪だらけになってしまった体を。ほんの一年前までは、彼だって周囲の期待を背負う選手だったはずなのに。
「わー、長谷川さん、Cカップくらいあるんじゃないすか、すげー」
などと言って津和野は、ぷよぷよ無邪気に揉みしだいていたのだが。
いらだちをぶつけるように声を荒げると、長谷川は、にこっと笑った。
「俺みたいにはなりたくないんだろ?」
なんでもないことのように。
長谷川も前は選手だった。二年の時に肩の亜脱臼を悪化させて骨をボルトでとめる手術を受けたものの、試合中にもう一度脱臼を起こした。
金属ボルトが肩の内部で折れ、関節をはめることもできずに病院の処置室に入るまで七転八倒した。長谷川の尋常ではない痛がりかたに驚き、青ざめたまま動けずにいる女子マネージャーたちをおしのけて救急車につきそいとして乗りこんだのは秀幸だった。試合のために着ていたジャージをベンチに脱ぎ捨てて車内に上がり、脂汗をかいてのたうちまわる長谷川をストレッチャーの脇で励まし続けた。
そして長谷川は、この病院で二度目の手術を受けたあと、選手からマネージャーに転向したのだった。
「これからは裏方でみんなをサポートすることにするよ」
退院してきたその日に寮のみんなに宣言した。そんな長谷川にどう接していいのか、当時の秀幸は戸惑っていた。
その後の長谷川は、筋トレルームでは記録係に徹し、グラウンドを走ることもなくなった。彼の体はみるみるたるんで、今や現役の頃の見るかげもなくなっていた。主務はミーティングの議事録作成や会計帳簿の管理などデスクワークが多いのだ。
秀幸は寮の風呂場で長谷川の裸を直視することができなかった。彼の脇の下から肩上にむかって赤くみみず腫れのようにもりあがった手術痕。そして中年のように脂肪だらけになってしまった体を。ほんの一年前までは、彼だって周囲の期待を背負う選手だったはずなのに。
「わー、長谷川さん、Cカップくらいあるんじゃないすか、すげー」
などと言って津和野は、ぷよぷよ無邪気に揉みしだいていたのだが。

