「……ほんとに、アンタだけは敵にまわしたくないですよ」
秀幸は片手に広げたカードごしにため息をついた。
一巡して、また曽我が札を出す。
「阿部さあ、今年のチームの出来、なかなかいいと思ってるよ。お前はいい主将だよ。でも、部が腐るときは、試合に出られない四年からだからな。レギュラーの成績にこだわるだけじゃなくて、もっとBチーム以下の連中ねぎらってやれよ。四年間、一度も公式戦の芝を踏まずに、お前らの練習台で終わるやつらがいるってこと忘れんなよ」
さらっと全員に突き刺さるようなことを言う。
「曽我さん、それって……」
阿部が何か言いかけた途端に、津和野が秀幸の背後からバッタのようにぴょーんと飛び出してきた。
「俺、イチ抜けー!」
いゃっふう! とまったく空気を読まない奇声を発すると、津和野は最後の札を投げ、嬉々として千円札を両手でかき集めた。
※ ※ ※
だらだらと続く賭けトランプの途中、便所に、と秀幸は抜け出した。もう話らしい話も終わっている。戻らなくても何も言われないだろう。
廊下を歩いて行くと、ぐい、と後ろから腕をひかれた。
「うまくいったか?」
たずねるのは葛城だ。
秀幸は片手に広げたカードごしにため息をついた。
一巡して、また曽我が札を出す。
「阿部さあ、今年のチームの出来、なかなかいいと思ってるよ。お前はいい主将だよ。でも、部が腐るときは、試合に出られない四年からだからな。レギュラーの成績にこだわるだけじゃなくて、もっとBチーム以下の連中ねぎらってやれよ。四年間、一度も公式戦の芝を踏まずに、お前らの練習台で終わるやつらがいるってこと忘れんなよ」
さらっと全員に突き刺さるようなことを言う。
「曽我さん、それって……」
阿部が何か言いかけた途端に、津和野が秀幸の背後からバッタのようにぴょーんと飛び出してきた。
「俺、イチ抜けー!」
いゃっふう! とまったく空気を読まない奇声を発すると、津和野は最後の札を投げ、嬉々として千円札を両手でかき集めた。
※ ※ ※
だらだらと続く賭けトランプの途中、便所に、と秀幸は抜け出した。もう話らしい話も終わっている。戻らなくても何も言われないだろう。
廊下を歩いて行くと、ぐい、と後ろから腕をひかれた。
「うまくいったか?」
たずねるのは葛城だ。

