南条が満足そうにうなずいた。

「三年の青木と向井、な」
「小野寺、塩谷はどうなんだ。あいつも金に困ってただろ」

 ラグビー部主将の阿部が話に入ってくる。最前列でスクラムを組むプロップを務める、百キロを越える巨体だ。

「いいんですよ、あいつは。親からの仕送り全部雀荘で、すってんですから」
「おー、小野寺ちゃん、身内にキビしいね」

 曽我がちゃかす。しかしその目は笑ってはいない。

「いざとなれば、ゲイ向けの写真撮影会に出演するって自分で言ってますから、ほっときますよ」
「写真撮影会?」
「マッチョは需要あるらしいですよ。ラブホテルのパーティールーム貸し切ってやるとかいう話で。カメラマンからのポーズ指定はできるけどお触りは禁止で、日当四万って言われたらしいです」
「あれで四万か、高いな」

 失笑がおきた。

「そういうのは社会に出る前に痛い思いさせとけ。それが塩谷のためだ。なんなら怖いお兄さん出動させちゃう?」

 曽我が酷薄な口調で言う。

「曽我さん、怖いお兄さんと知り合いなんすか」

 津和野があきらかにビビった声で尋ねる。

「あれ、言ってなかったっけ? 俺んち地元の不動産屋だから。家賃滞納だの立ち退き拒否だのやっかいごとがあるたび、怖いお兄さんに仕事発注する側なの」

 上機嫌で頬をひきあげると、鼻の傷も笑うようにゆがむ。