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 長机を二つくっつけた上に、菓子の袋とトランプの捨て札の山がある。

「体操部の逃げた部員、まだつかまんねーの?」

 曽我が二枚重ねて札を置いた。

 ラグビー部の寮部屋の中にあるミーティングルームだ。

「大学はやめてないみたいなんで、時間の問題っすよ」

 答えるのは体操部の主将だ。寮の先輩として曽我には他の部会も敬意を払う。とにかく年長者に弱いのが体育会系だ。

「なんのために、スポーツ推薦で入学したんだか」
「親元離れて気がゆるむんすよ」

 曽我の言っていた「首脳会議」とは、曽我を中心に入寮している部会の主将、副将、それに準じる面々が集まって情報交換とトランプの大貧民大会をすることを指す。捨て札の隣には、千円札が人数分積まれていた。

「遊びたいさかりなのに、カワイソウにねー」

 全然心のこもらない口ぶりで曽我が笑う。

「あ、俺パスっす」

 甲高い声に、一同の目が声の主に集まった。

「お? なんで津和野がここにいんの?」

 びく、と縮みあがった津和野が、こそこそと秀幸の背中に隠れた。

「あーすんません、俺の手持ち、ボールに入りたがらないんですよ」

 秀幸がしれっと言うと、

「お、俺っ、小野寺さんのポ○モンっすか?」

 津和野が叫ぶ。