秀幸はバックスだ。

「うん、じゃ、副将か。欲がねえなあ、小野寺ちゃんは」
「俺、今、それどころじゃねえんで」
「膝か」

 自分の不調を見抜かれていたことに少し驚いた。曽我は目つきだけではなく、洞察力も人一倍鋭いようだ。

「まだ痛えの?」
「もうちょっとかかりそうなんで」
「公式戦、始まっちゃうよ」
「大丈夫です。津和野が育つまでは、俺が修教のトライ決定率守りますんで」

 きっぱり言うと、曽我がひゅうと口笛を吹いた。

「ほら、な。俺だったら小野寺主将にするわ。今の監督は昔のやり方にこだわりすぎだっつーの」

 曽我の言葉に、そばにいる下級生たちが一斉に尊敬のまなざしで秀幸を眺めた。

「そういう背負っちゃってる奴、俺、好きよー」

 からかうように言う曽我の横で、ただひとり葛城が顔をゆがめて妬心をにじませている。

 ひそかに苦笑した。