眼光は見るものを射ぬくように鋭い。それでいてなにか言いたげに口角を上げている。いつもうすく笑っているようだ。

 何もなければそこそこ女にモテた顔だと思う。男らしい高い鼻梁は微妙に右側に曲がり、鼻骨の上に一筋の手術跡が残っている。鼻骨陥没骨折の治療痕だ。相手チームのラフプレーで顔面にスパイクをくらった時のものらしい。痛々しげなそれさえも、今となっては彼の武勇伝だ。

 曽我が着崩した上着のポケットから、ホープの箱を取り出す。一本くわえると、さっきから隣を陣取っていた葛城がすかさずライターで火をつけた。朝、野球部の二年をいたぶっていた面影はない。

(おーおー。嬉しそうにはべっちゃって)

 秀幸は内心ひやかしたいのをこらえた。

「曽我さん、勘弁してくださいよ。現役の前じゃないですか」

 喫煙をとがめると、

「ああ、そうだな。お前らは吸うなよ」

 しごく適当な返事が返ってくる。

 曽我の年齢なら、社会人チームや地域のクラブチームでまだ現役選手をやっていられるだろう。大学の一部リーグで活躍したのだ、そういう話だって十分あっただろうに、と思う。