短く刈り上げた髪、きりりとした濃い顔立ち。太い眉には一カ所傷跡でとぎれた部分があった。

「呼んでこいよ。今すぐ、野球部の二年集合させろ。他の部会に謝罪だ」
「あ、あのっ」

 野球部の二年生が情けない声をあげる。自分たちのせいで、野球部がほかの部会に頭を下げることになっては先輩たちに会わせる顔がない。部の恥になった、と部内の上級生からもシメられるということだ。

 洗面台に向かう数人は、誰もがうつむいて固まっている。

 秀幸は隣を見た。野球部の三年だ。自分の部会の下級生をかばってやらないのか、と鏡ごしにちらりと視線をやる。その顔は青ざめて、あきらかにキレた葛城にビビっていた。前の水栓からは水が出しっぱなしになっている。

 秀幸は水をはきだす蛇口に手をのばして、指でふさいだ。

 びゅっ。勢いを増した水はねじ曲がり、中心の通路の部分まで届いた。

「ひえっ」

 野球部の三年が悲鳴のような声を上げた。

「つめてっ」
「わりいな。床濡らして」

 たいして悪びれずに言うと、さっきまで野球部の二年を威圧していた葛城が、きっ、と秀幸をねめつけてきた。

「小野寺。……今のわざとだろ」

 低い声と細めた目が殺気をはらむ。そういう凶暴さは試合だけで見せろ、と言いたくなる。