「そうでも思わないと、納得できねえっす、俺~」

 津和野が芝居がかった動きで頭を抱える。

「茅野は毎週毎週俺にクスリ盛られてんのに気がつかないってか」
「いや、そこんとこは……茅野さんのほうももう小野寺さんとのキメセクの虜になってて、逃れられないとか……」

 二度目の深い深いため息をついた。

「お前の頭の中って、エロマンガとアダルト動画しかねえの?」

 ねえです! とキメ顔で答える頭を軽くはたいた。

「お前ほんと茅野いなかったら、あと何本か歯折れてっからな」

 冗談だとはわかっているが、津和野もそろそろはっきりしてほしいのだろう。毎週寮の自室に仮眠をとりにくる先輩の友人をどう取り扱っていいのか、困惑しているのは十分伝わっていた。

「デキてねえから。でも、ここで寝かしてやりたいんだ。いつも悪いな」

 秀幸が謝ってやると、津和野は不思議そうにまた茅野の寝顔に視線を眺めていた。

(クスリ盛ってる、か)

 他人の部屋でこれだけ爆睡できれば、そう思われても仕方ないのかもしれない。

 相変わらず眠り続ける茅野の清らかな寝顔をながめる。育ちのよさのにじみ出る、傷ひとつないなめらかな肌。少年のようなやわらかな曲線を描く頬。長い睫。

 ――デキてても驚きませんよ。

 さっきの津和野の言葉が頭の中によみがえる。