バッグを斜めがけにし、片方の肩に茅野のリュックを背負った。もう片方の肩を茅野の脇にさしいれて細い腰を抱き抱える。八十キロ以上もあるチームメイトを肩車してスクワットする普段の練習から考えれば、茅野を重いとは感じない。

「ごめん。ごめんね……」

 謝る声は、もう夢の中にいるようにとろんとしていた。

   ※   ※   ※

 秀幸はラグビー雑誌をめくりながら時折、眠っている茅野の様子を見ていた。

 修教大学男子体育寮の一室だ。六畳ほどの二人部屋には、ドアから入って右側に特注サイズの二段ベッドがある。スポーツ推薦で入学した学生たちの立派な体躯を支えるため、鉄支柱を使用した大型のベッドだった。秀幸は反対側の壁に並んだつくりつけの勉強机の椅子に座り雑誌を読んでいた。

 同室の津和野はまだ講義があって、この時間部屋にはいなかった。普段秀幸が使っているベッドの上段で、今は茅野が布団にくるまって眠っている。

 横向きになった色白の顔は無防備に寝息をたてていた。ベッドの脇には彼のリュックが立てかけてある。

 秀幸の手元の雑誌には、学生選手名鑑がついていた。大学チームの選手のプロフィールが写真入りで紹介されている。

 大学リーグ戦グループ。第一部リーグ。修教大学。やはり一番にそのページを開けてしまう。

 チームメイトたちのモノクロの顔写真が並ぶ。普段気やすい連中がやたらとかしこまった顔をしているのを見て、思わずにやけてしまう。そして、そこに自分も並んでいるのをくすぐったく思う。実家の母親はとっくに買って親戚に配っているだろう。