声は少しぼんやりしていた。

 支えるように押し返してやると、茅野はさらに大胆に秀幸の背中に頭を預けてきた。

「薬、飲んでるか?」
「今日は飲んでないよ。僕、小野寺といると気分がいいから……何もいらなくなるんだ」

 声のトーンが下がって、発音が不明瞭になってくる。

「眠いんだろ?」

 のぞき込むと、茅野はスイッチが切れてしまったように無気力な顔をしていた。

「……デパス、欲しかったのに。もう出してもらえないんだ。これ以上強い薬出すと、僕が、依存症になる危険があるって。だから最近……」
「家で眠れてないのか?」
「……弱い薬しか出してくれないんだ、先生が」

 もう眠気を我慢できないように、茅野は目を閉じた。

「きっとストレスだ。勉強が厳しすぎるんだろ」
「僕が弱いんだよ」

 か細い声がする。

「寮で寝てくか?」
「いい? ああ、でも、もったいないな。……せっかく小野寺といるのに」

 そう言いながら、もう睡魔にあらがえなくなって半眼になっていた。