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 修教大学多摩キャンパスは都心から離れた緑の多い丘陵の中にあった。伝統ある本校舎から私鉄急行電車で三十分ほど下ったところだ。

 十年前にこの新しいキャンパスが建てられたとき、隣接して運動部用のグラウンド、トレーニング設備と寮を兼ねたセミナーハウスも建築された。秀幸はそこで暮らしている。

 食事のあと、茅野はグラウンドが見たいと言って寮までついてきた。ほかの部会はそろそろ練習の準備が始まっていたが、ラグビー場はひっそりとしていた。

「芝、刈ったんだね。いよいよ本シーズンかあ」

 茅野はH型ゴールの立ったグラウンドを感慨深そうにみまわす。芝生は所々はげて土の色が見えていたが、まだ冬枯れにはなっていなかった。

 視線を上げると、野球のグラウンドとの境目に植えられた銀杏並木が見事な黄金色になっていた。

「毎週来てるだろ」

 思わず笑うと、茅野も、くしゃっと微笑んだ。

「うん、でも、見られるとうれしいんだ。小野寺はここでいつもキツイ練習頑張ってるんだなあって思うと、なんだか僕もパワーがもらえそうな気がする」

 グラウンドのサイドに設けられたベンチに二人で座る。茅野は、よっこいしょ、とリュックをおろした。