君の膝の骨になりたい

 秀幸は大学ラグビー選手としてはけっして体格が大きいほうではなかった。しかし、高校時代からの日々の筋力トレーニングで鍛えあげた逞しい体つきは、服の上からでも見てわかるほどになっていた。人中を歩くとなんとなく周囲の人々が道を開ける。

 学内の掲示板の前に来た。壁面が大きなホワイトボードになっていて、休講や追試をしらせる紙が、細長いマグネット板で留められていた。中にはカルチャーセンターふうの生涯学習講座の案内もあった。

 すみのほうには、春から貼りっぱなしで色あせたサークルの勧誘チラシもあった。友達作りのためのイベントサークルは、スポーツ推薦で入学し、最初からラグビー部に入ることが決められていた秀幸にとって未知の世界だった。

 廊下の突き当たりは別棟へつながる渡り廊下になっていて、学生がガラスドアを行き来するたびに、秋の陽がきらきら反射して天井や壁にはねた。

 学生がひとり、重たげなリュックを背負ってドアをひいた。ふわ、と乾燥した風が入り、貼られた紙が一斉に壁の上ではばたく。

「小野寺」

 嬉しげな声をあげて駆け寄ってくるのは、この大学の法学部に在籍する茅野穂だった。

 金の輪をはめたような髪の艶が一度風に散り、また茅野の頭上に集まる。ボタンダウンの白いシャツにVネックのコットンセーター。ストレートのチノパンツという、絵に描いたような古典的アイビールックだ。少し気弱に見えるおだやかな表情。キメの細かい清潔な肌。さらさら揺れる髪。彼はいつでも、すみずみまで手入れされた調度品のような上品さをもっていた。

 対する秀幸は、スポーツブランドのロゴが背中に大きく入ったウインドブレーカーに、大きめのジーンズというラフな格好だった。

 これでも部内ではまだマシなほうだ、と思っている。秀幸の暮らす体育寮は、出身高校の名前入りジャージ、裸足につっかけサンダルでどこへでもいくような連中ばかりなのだ。