君の膝の骨になりたい

 午前の講義が終わって一斉に教室がざわめく。

 修教大学多摩キャンパス二階、大きなすり鉢状になった階段教室だ。

「小野寺、昼飯行く?」

 近くの席に座っていたラグビー部の連中が秀幸の席のまわりに集まってきた。

「どうする? 食堂? それとも外行く?」

 別棟にある食堂では部の下級生がすでに席をとっているだろう。そこに集まるか、と訊かれているのだ。

 秀幸は手早く電子辞書をたたんでテキストを重ね、バッグにしまった。

「いや、俺は今日約束あるから」
「あ、そっか」
「月曜いつもそうだったな」

 部活が休みになる月曜日は、いつも行くところがあった。約束と呼べるほどきちんと言葉をとりかわしたこともなく、ただ習慣のように会うことになっている相手だった。

「仲いいよな」
「高校時代のダチだっけ?」
「この前寮にも来てたな」

 秀幸は立ちあがった。

「悪いな。じゃ、あとで寮で」

 階段を降りて、学生課の脇の廊下に向かう。十年前に建てられたばかりの校舎は白を基調としていて明るい雰囲気だった。