君の膝の骨になりたい

 茅野がぱちくり、と目をしばたいた。唐突な言葉をゆっくり理解しているようだった。

「それは……僕がそこに会いに行ってもいいってことかな?」

 弾む声に、隠しきれないとまどいと期待がにじむ。

「ああ、いつでも来いよ」

 ほんの少し目を細めて言うと、茅野は頬を染めて、こくんとうなずいた。

「俺がいるかどうかもわからないけどな。お前は勝手にしたらいい。でも俺に、それ以上のことは何も期待しないでくれ」

 最後はなるべくそっけなく言った。

 茅野の表情がすっと温度を失う。

 ぽと。長机の上に赤い実が落ちて秀幸のほうへ転がってきた。秀幸の不実を責めるような紅い色だった。

 こんな不毛な試合(ゲーム)を、いつ終わりにできるのだろう。

 秀幸は暗い気持ちで考えた。

 茅野を突き放すこともできないくせに、こんな気のないふりをいつまで続けていられるだろう。

 それは、秀幸が生まれて初めて感じるひどく臆病な感情だった。