君の膝の骨になりたい

「やっぱり……小野寺くんは優しいね」

 嬉しそうに、それなのにどこか苦しげに茅野は言った。こんなところでずっと待っていて、俺がここまで来なければ彼はどうしていたのだろう、と秀幸は思った。

「君のファンだっていう女の子たちが教えてくれたんだ。小野寺くんはどんなにせまっても、携帯番号もメアドも誰にも教えてくれないって。だから正攻法では仲良くなれないんだなって思って」
「ああ、それは……前にうまくいかなかったからな」

 秀幸は手近にある椅子をひいて、どかっ、と腰掛けた。


 うんざりした調子で答えると、茅野がまた気まずい顔になる。

 やれやれと思いつつ、秀幸は自分の乏しい恋愛経験を語った。

「昔、告白してくれた子とつきあってみたけど、面倒くさくなって別れた。『今起きた』とか、『これから寝る』とか、何食ったとか。そういうこといちいちメッセージで報告しあう意味もわからなかったし。こっちは疲れてるのに、『友達が失恋したから相談に乗ってあげて』、とかいって深夜まで他人のお節介につきあわされるし。そういう交際が『楽しい』とか、『頼られて嬉しい』とか、俺にはそうふうに思えなかったから、もうしょうがねえなって」

「部活で忙しいから?」

「それもある。でも、正直なところ、部活の連中との結束が強すぎて、それ以外は手に負えないんだよ。部活の仲間優先でしかつきあえないし。最初は『それでもいいから』、なんてけなげなこと言ってた女も、そのうち『私のことなんてどうでもいいんでしょ』とか、いろいろ面倒くさいこと言い出すし。彼氏になったところで、俺は俺なのにな。一体どうしたいんだろうな」

 ほぼ毎日練習のある運動部の部員は、皆そんな感じだった。