「津和野くんっ、倒した。倒したぞ」
「GJ(グッジョブ)! まだまだうじゃうじゃ来ますんで、弾丸節約してくださいよー」
「本当かっ」

 茅野が指先で秀幸の肩をたたき、二人はそっとチャイルドルームを離れた。

 事務所を出てエレベーターホールに向かう。

「津和野くんが兄の友達になってくれて、本当に嬉しいよ」
「あの二人、小学生みたいだったな」
「……兄にはそういう時間がなかったんだ」

 そう言う茅野は少し涙ぐんでいるように見えた。

「でも、大丈夫。何度でもやりなおせるだろ」

 秀幸が力強く言うと、茅野はこくんとうなずいた。

 秀幸はその手を握り、そっとコートのポケットの中へ入れた。ささやかなぬくもりが愛おしい。
 もう冬が近い。