「ね〜ぇ?」
姫は私の顔を覗き込んできた。
「翔くん、戻ってきてくれて、嬉しい〜?」
「当たり前だよ!嬉しいに決まってる。」
なんでそんなこと聞くんだろう。態度、悪かったのかな。だったら翔に申し訳ないよ…
「蓮くんと翔くん、どっちが好き〜?」
「二人とも好きだけど、どうしたの?」
「ウソ〜!翔くんのこと「好き」なの?二股ぁ?」
ようやく理解できた。私が「好き」なのは蓮だし、私が「好き」なのも翔だけど。翔と蓮は違う。
翔は友達として好きだし、ずっと一緒に居た幼馴染だし。蓮は中学生の頃の彼氏だし。
「翔は、友達だよ。でも、蓮は違う。それに…」
「そ・れ・に・?」
「蓮は、『愛してる』って言えば良いのかな?ご、ごめん!なんか…図々しくなっちゃって」
「もーう!いつでもポジティブでいなきゃ!」
「ごめん。あと…翔は家族、って感じかな?ずっと一緒にいるし。なんか、ほら。説明しにくいけど」
「はぁ〜?つまんないよ〜!三角関係じゃな〜い」
姫は膨れている。タコのように。
「で、でも…。翔が私のこと、好きなわけないし…(?)ほら、違うよ!翔、渋谷女子がタイプっぽい!」
「日葵ちゃんも渋谷女子じゃ〜ん!」
「お、オシャレじゃ、ないから。住んでるだけ」
「え〜?え〜?」
その日は、姫がうるさくて、なかなか寝れなたった。
 朝の日差しがまぶしくて目をこする。カーテンから繁華街の明かりが差し込む。
「おはよう…姫」
「起きた~!翔くんの家、行こうっ!」
姫、まだ朝なのに元気だな。うらやましいよ、、
「行こう…うん。行こう」
「大丈夫?寝ぼけてる?おーい!日葵ちゃ~ん!」
「う、うん。ごめん。起きた」
「今起きたの⁉」
姫が驚いている。私は朝に弱い。ますます情けないな。
「翔の家、どんな感じかな?」
「う~ん?豪華でしょ、絶対!あれじゃん、お金持ちじゃん。」
翔のお父さんは社長さんだったっけ。すごく有名な会社で、私も知っている。
昔は、私と姫のお父さんと仲が良くて、一緒にご飯に行ってたな。思い出した。
そのたびに、『あの人…翔矢さんと仲が良いわねぇ』ってお母さんが呆れてたな。
「ひ~ま~り~ちゃ~ん?」
「ご、ごめん!行こう。」
私は、昔の事ばかり考える私のことを、好きになれなかった。