二年前、蓮と一緒に通った並木道が切ない。
雪が降っているのを見ると、胸が苦しくなる。先ほど書いた手紙を握りしめる。
手紙を送るために外に出たけど、4月だと思えないくらい寒い。
まるで、惨めな私に皮肉を言っているようだ。『あの頃を思い出せ』と。
思い出しても、蓮は帰ってこない。悲しいけどどうしょうもない。それは『事実』だから。
「蓮、私のこと、どう思ってる?嫌いになった?」
ポストに語りかけた。蓮はきっと、聞いてくれていると信じて。
「もちろん、嫌いだよね。でも、忘れないで」
私は絶対、蓮を忘れないからー。
そろそろ姫が帰ってくる時間だ。
昨日買ったシチューの素と具材を鍋にかけて、姫を待つ。
家事は小さなころからやっているから、慣れている。
「ただいま~💕」
ちょうど姫が帰ってきた。
「日葵ちゃ~ん!学校、どうだったぁ~?」
「とっても楽しかったよ。」
「日葵ちゃん、蓮くんのこと、今も気にしてるでしょ~」
痛いところをつかれて、何も言えなくなる。
「ごめんね、日葵ちゃん」
「えっ、なんで?」
姫のスマホを見て、すぐに分かった。最近、姫と蓮の熱愛疑惑がネットを騒がせている。
「ほんとに何にもないんだけどね~!なんで面白がるかなぁ~」
事務所のトップアイドルどうしの恋愛。メディアが気になる理由がわかる。
姫はわざと平気なふりをしているだけで、本当はつらいんだ。気遣いなんかいらないのに。
私が一番知っている。姫はそんなことをしないって。
「姫、大丈夫?」
「大丈夫だよ~私の心配をしないでよ~✧♡」
「無理しないでよ、大事な姫だから」
「ありがと~!だけど、無理しなきゃいけない時もあるでしょ~?」
「無理しすぎはいけないよ!」
姫は天然でヘラヘラしてるけど、本当はすごく繊細な性格だ。
無理をしすぎて体を壊してしまったら、もちろん、姫も困るし、私も困る。
「えへへ。怒られちゃったよ~」
「姫、お願いだから幸せに生きてね!」
「なんか、あの時みたい…。あっ、ごめん」
あの時。お母さんとお父さんが死ぬ間際のことだ。
思い出したくないけど、思い出してしまう、呪いの言葉。
『姫莉と日葵には幸せに生きてもらいたいんだ。ごめんな?せっかくの旅行なのに』
『お願いだから健康で幸せに生きてね。私の大事な大事な娘だから』
そのあと、病院に搬送された二人だったけど、二人とも助からなかった。
私たちは泣けなかった。泣く気力もなかった。時間が経って、お葬式が過ぎてから泣いた。
「姫。謝らなくていいんだよ。だってー。思い出しちゃうでしょ」
「うん」
「たまには、言ったがいいときもあるよ。吐き出してね、なるべく」
「日葵ちゃん、優しいな~」
姫の口調は明るいし、声をいつもの姫だ。だけど、表情は暗かった。
雪が降っているのを見ると、胸が苦しくなる。先ほど書いた手紙を握りしめる。
手紙を送るために外に出たけど、4月だと思えないくらい寒い。
まるで、惨めな私に皮肉を言っているようだ。『あの頃を思い出せ』と。
思い出しても、蓮は帰ってこない。悲しいけどどうしょうもない。それは『事実』だから。
「蓮、私のこと、どう思ってる?嫌いになった?」
ポストに語りかけた。蓮はきっと、聞いてくれていると信じて。
「もちろん、嫌いだよね。でも、忘れないで」
私は絶対、蓮を忘れないからー。
そろそろ姫が帰ってくる時間だ。
昨日買ったシチューの素と具材を鍋にかけて、姫を待つ。
家事は小さなころからやっているから、慣れている。
「ただいま~💕」
ちょうど姫が帰ってきた。
「日葵ちゃ~ん!学校、どうだったぁ~?」
「とっても楽しかったよ。」
「日葵ちゃん、蓮くんのこと、今も気にしてるでしょ~」
痛いところをつかれて、何も言えなくなる。
「ごめんね、日葵ちゃん」
「えっ、なんで?」
姫のスマホを見て、すぐに分かった。最近、姫と蓮の熱愛疑惑がネットを騒がせている。
「ほんとに何にもないんだけどね~!なんで面白がるかなぁ~」
事務所のトップアイドルどうしの恋愛。メディアが気になる理由がわかる。
姫はわざと平気なふりをしているだけで、本当はつらいんだ。気遣いなんかいらないのに。
私が一番知っている。姫はそんなことをしないって。
「姫、大丈夫?」
「大丈夫だよ~私の心配をしないでよ~✧♡」
「無理しないでよ、大事な姫だから」
「ありがと~!だけど、無理しなきゃいけない時もあるでしょ~?」
「無理しすぎはいけないよ!」
姫は天然でヘラヘラしてるけど、本当はすごく繊細な性格だ。
無理をしすぎて体を壊してしまったら、もちろん、姫も困るし、私も困る。
「えへへ。怒られちゃったよ~」
「姫、お願いだから幸せに生きてね!」
「なんか、あの時みたい…。あっ、ごめん」
あの時。お母さんとお父さんが死ぬ間際のことだ。
思い出したくないけど、思い出してしまう、呪いの言葉。
『姫莉と日葵には幸せに生きてもらいたいんだ。ごめんな?せっかくの旅行なのに』
『お願いだから健康で幸せに生きてね。私の大事な大事な娘だから』
そのあと、病院に搬送された二人だったけど、二人とも助からなかった。
私たちは泣けなかった。泣く気力もなかった。時間が経って、お葬式が過ぎてから泣いた。
「姫。謝らなくていいんだよ。だってー。思い出しちゃうでしょ」
「うん」
「たまには、言ったがいいときもあるよ。吐き出してね、なるべく」
「日葵ちゃん、優しいな~」
姫の口調は明るいし、声をいつもの姫だ。だけど、表情は暗かった。



