千鶴の縁談が決まってから数日が経過した。変わらず千鶴は屋敷の掃除に洗濯と言いつけらたことをこなす。

父からは正午に久世家との顔合わせがあると聞かされた玲華はその時に着る着物を選んでいた。

一条家の者として恥じぬように着飾ることも大切である。縁談の主役である千鶴には父が用意した着物が贈られた。

価格は玲華のと比べて安価だか、それでも一般人では買えない金額の品物だ。

父が言うには一応、一条家の人間として、相手に失礼がないようするのが礼儀とのこと。

顔合わせで使うのは先日の大広間。千鶴は父から最後にここの掃除を任されていた。

着替えた玲華が大広間へとやってくる。掃除をしている千鶴に目線を向けるといつものように扇子を広げてクスクスと笑い出す。


「お姉様の縁談なのに、掃除なんて呑気なものよね」

「久世家の皆様を気持ちよく迎えるためだとお父様からのご命令です。すぐに終わらせますので、もう少しお待ちください」

「そうね。汚い部屋を見せるなんて恥ですものね。ただでさえ異能が使えないのに、これ以上無能になっては久世様に申し訳ないわ。実の姉が、掃除もまともに出来ない出来損ないなんて。あははっ！」


（今日でその無能とはお別れ。早く私の屋敷から出ていきなさい）


千鶴は玲華の心のない言葉に耐えながら襖の埃を落とす作業を進める。着物に埃が付くことを気にして玲華は一度部屋に戻ろうとした。

すれ違い際に障子に手をかけ、ビリビリと破きだす。