話が終わり千鶴は大広間を出ていく。解散を命じられ、玲華も母と一緒に部屋を出る。

稽古場へと向かった玲華は再び使用人として働く千鶴と出くわす。

「あらお姉様。もう仕事?精が出るわねぇ」

「とんでもございません。使用人として当たり前のことをしているまでです」

「そうよね。というか、お姉様にはそれしか取り柄が無いものね。せいぜい嫁いでも使用人として扱われるがいいわ。一族の恥でしかないお姉様が出ていって清々する。あぁ、これで肩身狭く生きる必要はないのね」


千鶴のことは外では話してはいけないと父からそう言われてきた玲華。

居なくなればもう会うことなく、正式に一条家の長女として誇れる。これほど喜ばしいことはないと玲華はそう考えていた。


(これで一条家は私のモノ!優秀な私こそこの家にふさわしい…!!)


「ふふふ。あーはははっ!」


声高らかに笑う玲華の声は屋敷に響き渡る。


そんな玲華だが内心では悔しがっていた。自分より先に縁談の話がきた姉に対して嫉妬心を燃やしていた。


(まさかお姉様が縁談するなんて。お父様はこの玲華を差し置いて、何を考えているの?しかもお相手は異能者として頂点に立つあの、久世家の当主。無能なお姉様には不釣り合いだわ)