異能者の血筋で能力も地位も優秀な家柄との婚礼は一族の将来にも大きく関わることになる。

優秀な血筋を手に入れて優秀な子を産み、一族を支える。それが当主としての役割なのだ。

優秀で無ければ一族の汚点となり、異能の家系としての信頼を失う。これまで積み上げてきた実績が一瞬にして水の泡となるのだ。

プレッシャーが強い中で玲華は常に耐え、己を磨き続けた。全ては異能者として認められるため、頂点に立つため…!

自分は千鶴とは違う。姉のような人生なんて真っ平御免だ。

将来を約束されている玲華に怖いものなどない。玲華は自信に満ち溢れていた。


ーー大広間に入った玲華は父の前に座り、頭を下げて挨拶をする。

続いて母・幸恵が大広間へとやってくる。家族全員が揃ったところで話が始まると思いきや、一向に口を開かない利政。


(どうしたのかしら?いつもならお母様が来たら話を始めるのに)


不思議に思いながら父が口を開くのを待っていると遅れてもう一人、大広間へとやってきた。


「失礼します。千鶴です」


(…お姉様!?)


「入れ」

「失礼します」


いつもは大広間への立ち入りを禁じている姉・千鶴がやってきたことに驚きを隠せない玲華。しかし取り乱すことは許されず、父の許しがあるまで一歩も動けない。