千鶴は涙を流した。心のどこかでずっと求めていた。だけど、自分が手にするには大きすぎる。

これ以上何を望むのか。十分過ぎるほど、千鶴の心は幸せに満ちいていた。

だけど凪一への気持ちは溢れんばかり。贅沢すぎる幸せを手にするのが怖かったのだ。

けど千鶴は凪一と再会し、その想いに嘘などつきたくないと思った。

やっと出会うことができたんだ。共に生きたいと思える大切な人に。


「私でよろしいのですか?無能でなんの取り柄もない私は久世様にはその、釣り合わないのでは?」

「俺が決めたんだ。初めて出会ったあの日から。俺は君を離したくない。改めて聞こう。千鶴、俺の妻になってくれるか?」

「はい…!凪一様」



凪一様。私は孤独です。臆病者です。幸せを手にするのが怖くてたまりません。


だから私はゆっくりと貴方の後ろを歩いていきます。


その背中に追いつき、隣を歩くことが出来たその時は心が幸せに満ちているでしょう。