あれからひと月が過ぎようとしていた。一条家の3人の身柄は遠い田舎へと送られることになった。

組織に事の一件を久世家により報告され、解雇となった3人を二度と名家の異能者たちの目に触れさせないために罪を一生をかけて償わせる形となった。

千鶴は今も一条家の屋敷で暮らしている。

玲華たちが残した私物や利政が集めた書物を整理し、屋敷を空っぽにするために毎日、もと使用人たちと作業をしていた。

凪一から人を集めて手伝うと言ってくれたが、千鶴は自分の家族が残した物は自分が最後まで責任をもって片付けると言って断った。


「これで最後ね」


最後の書物を片付け終わる。使用人たちは羽を伸ばして縁側でひと休みを始めた。

その風に吹かれて庭の草木がゆったりと揺れる。ぽかぽかとした日差しが心地よい。


「千鶴様、これで本当に最後ですね」

「えぇ。屋敷とも今日でお別れね」


一条家で働いた使用人たちは久世家と関わりがある屋敷に行くもの、田舎に帰って行くもの。皆それぞれの道を進むことになった。