(いつまでも憎んでいくのね。私たちを。全部自分が招いた種だと言うのに。他人のせいばかりにして)


「お父様」

「うるさい!お前など、娘でもなんでもない。無能な貧乏人の役たたずだ!!」

「そ、そんな……。お母様からも何かお父様に…お母様?」


幸恵も利政と同様に肩を落としてその場に膝をつき、意気消沈となっていた。玲華も戦意喪失となって頭の中が真っ白になる。


「この3人は久世家で一旦引き受ける。今晩は俺の屋敷に泊まるといい」

「久世様、ありがとうございます。ですが、今晩はここに居ます。壊れてしまいましたが、最後に家族としてここに居させては貰えないでしょうか?」


心の隅でいつも願っていた。本当の家族として暮らしていたあの日に帰りたい。千鶴は異能を持たない。だからこそ、普通の関係を望み、暮らしを思い描いていた。


「好きにすればいい」


凪一は一条家の1件を組織に伝えるべく、ひと足先に屋敷を出た。

千鶴は3人の手を取り、大広間で最後の晩餐を囲んだ。一言を発することなく終えたが、千鶴は言葉を交わすことは願っていなかった。


「お父様、お母様。それに玲華。19年間、私を一条家の屋敷に置いていただきありがとうございます。このご恩は忘れません」


長年苦しめられてきたが、19年間一条家の屋敷で暮らし、生きてこれたことに感謝の言葉を述べる。

そのおかげで出会うことができた。共に手を取りあって生きていきたい、大切な人に。