(そのような約束を。お父様は初めから私からも久世家からも縁を切るつもりでいたのですね)


千鶴はどこまでの自分の欲を満たすことばかり考える利政を親として見ることはできない。ここまで生きてこられた恩など初めからない。

実の両親を亡き者にし、妹である玲華を利用してきた。もはや善意を向けるなどと愚かな真似をするのはこの世で2人。

玲華と幸恵は利政に近づき、傷ついた心を慰めようとする。しかし……


「触るな無能共!!」

「あなた?」

「お父様…どうしたというの?」


利政の様子に混乱する玲華と幸恵。


「分からないのですか?この男は初めから私たちを家族だなんて思っていません。人間を道具としか見ない、毒に朽ちた人間です」

「そんな…。お父様、私はまだ終わりたくありません。異能者の頂点に立つのがお父様の夢なのでしょう?これからも努力して参ります。だから…玲華を見捨てないでくださいませ」


玲華の言葉など、利政には届かない。欲望のために金も時間も全てを費やした結果がこんな形で壊れてしまった。


「やはり育ちが悪い者を育てるべきではなかった。もっと優秀な名家の子を養子に迎えていれば、こんな事には……」