娘の嘘を簡単に受け入れる利政に呆れる千鶴と凪一。玲華はその影で涙を流すふりをして笑みを浮かべていた。


「俺がここに来たのは千鶴を救うためだ。一条利政。貴様たち一家は久世家の権限において、異能者の組織から追放する!」


追放となれば今後一切、組織に関わることは許されない。異能を使うことも制限される。

一条家が今まで積み上げてきた地位と名誉は崩れ落ちていく。


「千鶴を救うだと?その娘はお前の嫁となった。顔合わせの日を栄に一条家とは関係が無くなったんだ。今更何を言っているんだ!?」


(この者は私と玲華の声色の違いに気づいていなかった。だから今日までバレずに済むことができた。やはり玲華のことは操り人形としか見ていなかったようね)


千鶴は立ち上がった。自ら利政に真実を伝えるべく、今まで立ち向かえなかった狂気に。


「私は顔合わせには出ておりません。あの日、久世様の前に顔を出したのはあなた方が偽りの愛を注いでいた玲華です」

「無能が口を出すな。玲華、今のは誠か?それとも偽りか?どっちだ!」

「本当です。私は一条千鶴として久世様の前に立ち、この数日間ともに同じ屋根のもとで生活をしていましたわ」