◇ ◇ ◇

(…玲華。私がもっと早く向き合っていればこんな事にはならなかった)


玲華の心にはもう自分はいない。目の前には敵意を向ける妹・玲華の姿が千鶴を追い詰める。


「消えて!この無能!!私を侮辱する者は、たとえ実の姉だろうと許さなくてよ」


玲華の手が千鶴に伸びる。首を掴まれ、苦しさで息をしようと口を開けるが酸素を吸えない。

手を振り払おうとしても異能で行動を制限されているため、抵抗できない。

必死に酸素を吸おうとする千鶴の口に毒を流し込まれた。首を掴んでいた手が離され、畳の上でもがき苦しむ。

「うぅ…あああぁ!!」

「ふふっ、いい気味ね。…利用されていようと、一条家に居れば私は異能者としての地位と名誉を手に入れることが出来る。それをお父様に捧げることが出来るなんて、こんなにも光栄はことはなくってよ!」


(やめて玲華。これ以上、自分を苦しめないで…。誰か、あの子を止めて。異能を持たない私ではもう、どうすることもできない)


死に迫る恐怖より、実の妹を救えない己の無能さに涙を流す。


「まだ終わってない。君は生きて、愛する家族を守ると誓った。違うか?」

「えっ…!?凪一様!?どうしてここに…」


玲華の後ろに突如として凪一が現れる。表情から怒りが満ち溢れている。


(久世様?)