一条家の屋敷へと戻ってきた玲華は真っ先に千鶴がいる部屋へ向かう。

着くなり部屋の襖に施した異能を解除。開けると横たわる姉・千鶴の姿があった。千鶴はあれ以来食事を摂っていない。

玲華が毒を盛った食事はそのままで一口も手がつけられていない状態だった。知っていたのだ。玲華が毒を隠しく持っていて、それを食事にかけたことを。

あの日食べなかったのは毒を恐れていたから。


「れい、か…？」

「なんて、哀れなの。お姉様のこの姿を見ることが出来るなんて光栄ですわ。あぁ、ようやく一条家から消えるのね」


弱っている千鶴の姿に慈悲などない。命の灯火が今にも消えそうな姉を哀れと評し、じっくり観察するその姿は悪女そのもの。


「凪一様から聞きました。手を組んでいたんですってね？この私を騙すなんて何を考えていらっしゃるのかしら？教えてくださる？お姉様」


弱る千鶴の顎を持ち上げて無理やり目を合わせる。もはや千鶴には反抗する力は僅かとなっていた。


「貴女が信じていた、一条家の両親は私たちを騙していた」

「騙す？お父様とお母様が？」

「あの2人とは血の繋がりはありません。本当の両親はあの者達に殺されてしまいました」


（え…？）


驚く玲華は千鶴を落とす。畳に顔を打ち付けた千鶴は「うっ…」っと声を上げる。