異能は万能ではない。どんな人間にも負の感情があるように、異能にも欠点がある。

その中で玲華は物や人間の動きを制限できても、発動された異能は封じることができない。

父・利政はそれを克服擦るべく、あらゆる手段で改善を試みたがどれも上手くいかなかった。なんでも完璧にこなせる玲華にとって誰にも知られたくない弱点。

千鶴はそれ知り、凪一に告げた。一条家の屋敷から出ることが出来ても、玲華の心はもう取り返しのつかない状態になっていることを心配した千鶴は万が一のために知っていてほしかった。


ーー玲華は千鶴に弱みなど見せたことがない。いや、見せないようにしていた。

千鶴に弱点を知られれば完璧である自分が無能と知られるのも当然と考えていたからだ。姉のようになりたくない。父や母に“一族の汚点”と言われるのを恐れていたからだ。


「お前が初めて屋敷に来た時から、俺は異能で全身を包んでいた。身動き取れないフリをして、お前の本性を炙り出すことに成功したという訳だ」

「見事手のひらに転がされていたという訳ね。しかもあんな無能に…。無念だわ」

「お前はずっと目を背けていた。自分からも、たった一人の家族である姉からも」