「偽りの愛など、なんの意味をなさない」

「偽りの愛?何を言っているのですか?私は凪一様のことを愛しています。この気持ちに嘘などありません」


徐々に低くなる声色に今まで余裕を見せていた玲華の表情は恐怖に満ちていく。凪一の怒りが頂点に達し、目を鋭くさせ拘束している手に力が入る。


「ましてや偽りを装い、毒に朽ちた幸せなど許されるはずがない!」


凪一の怒号が響く。「ひぃ…!」と怯えた声を上げる玲華。


「おやめ下さい凪一様!私が、千鶴が何か無礼を働きましたか?ならば謝罪します。お許しください…!」

「まだお前は“千鶴”と名乗るか?一条玲華」

「え…?何を言って…私は千鶴です。貴方の婚約者の一条千鶴です!」

「お前にその名を語る資格などない。俺の目の前にいるのは一条家の次女である一条玲華。違うか?」


手を離し、起き上がった玲華を真っ直ぐと見る。手首に痛みがあるのか摩る仕草を見せる玲華は「はぁ…」っとため息をついた。

千鶴を演じるのやめた玲華から令嬢として植え付けられた気高さを感じる表情を見せる。


「化けの皮が剥がれるた気分はどうだ?」

「最悪ね。こんな気分は初めて。けど、いい気分でもあるわ」


玲華は追い詰められたというのに、余裕の表情を見せる。


(なんだ?この感じは…)