寝室に引かれた布団に凪一は腰を下ろす。


「ここまでで良い。部屋に戻れ」

「凪一様をほおっておく訳にはいきません。それに私はまだ離れたくありません…」


不安を装う玲華の手を掴み、己の頬に当てる。


「ならば、俺の願いを叶えてくれるか?」

「願い?…凪一様のためなら私は身も心も差し出す覚悟です。何でもお申し付けください」


欲にまみれ、偽りを演じる女を瞳に映し主導権を握る。手を引き、畳の上に押し倒すと片手で細い両腕を拘束する。


「凪一様…?」


(こんな者のために、彼女は…)


それでも千鶴が守りたいと願った、たった一人の家族。傷つける訳にはいかない。しかし玲華の心はもう荒んでいて助ける価値などなかった。

己の怒りをぶつけにわざわざ実家にいる姉のもとへ出向き、傷つけたにも関わらず、平穏を装う玲華に対して凪一は限界だった。