しくしくと偽りの涙を流す玲華。これを断れば久世家の当主は婚約者を大切に出来ない心無い方と世間からの評価はガタ落ちとなってしまう。

立場が危うくなるのは当主としていただけない話だ。


「分かった。今夜は共に過ごそう。ただしこれきりだ。部屋に入るのを許すのは」

「はい…!ありがとうございます。千鶴はこんなにもお優しい婚約者をもって幸せです」


作戦が上手くいき、ニヤリと笑みを浮かべる玲華。

(これで今宵は凪一様と2人っきり。私がいかに久世家に相応しいか思い知るがいいわ)


全ては久世家の地位と名誉を手に入れ、異能者として頂点に立つため…!両親が夢にまでみたものを現実にするため。

一条家の名が世界に轟かせる日も近い。