「どうです?三日ぶりの食事は?さぞ、美味しいでしょう。そうですわ。お姉様のためにこれを食事に加えて差し上げましょう」


着物の袖から粉末が入った小瓶を取り出すと、それを千鶴の食事に少量かける。


「さぁ、お姉様。召し上がってください」

「何をしたの?」

「食べてみれば分かりますわ」

「いただけません。そのような得体の知れないもの、口になどしません」

「いいのですか?お姉様、このままでは死んでしまいますわよ?」

「貴女もう、屋敷を出た。私はそれだけで満足です。このままあの世へ行けるのならむしろ喜ばしいことです」


千鶴の考えが全く読めない。玲華は食事を与えるのをやめる。


「全く分かりませんわ。お姉様がおっしゃることが」

「…いずれ分かります。もうここを出なさい。私がどうなろうと貴女には関係のないことでしょう?」


姉が自分に冷たい態度を取るなんて今まで一度もなかった。それが何故か不快に感じる。

玲華はそのまま部屋を出た。


(お姉様まで何ですの?この私を突き放すような態度で。凪一様もお姉様も理解できませんわ。いざという時のこれも少し無駄になってしまったわ)

小瓶を再び袖にしまって久世家の屋敷へと戻って行く。