「お父様もありがとうございます。ですが、私は今は一人になりたいのです」


玲華の異能で開けることが出来ない襖。両親はその異能で自分たちを中に入れないようにしているのだと勘違いしている。

2人は食事を部屋の前に置いて立ち去る。玲華は誰も居ないことを確認して部屋の前に立つ。


「お姉様、ご機嫌はいかが?」

「玲華…!」


玲華は襖に手を置き、異能を解除する。襖を開いて3日ぶりの姉の姿を目にする。

千鶴は一切食事も水分も摂っていない。もとから細かった身体はますます痩せ細っていた。


「お元気そうでなにより。相変わらずしぶといですわね」

「何しに戻ってきたの?」

「あらあら。お姉様の様子を見に来たに決まってますわ。簡単に死なれちゃ、困りますもの」


食事が乗っているお盆を持って部屋に入る。再び異能で襖の開閉の自由を制限する。

警戒して後ろに下がる千鶴。玲華はお盆を畳に置く。


「お腹空いていらっしゃるのでしょう?私が食べさせてあげましてよ?」

「結構です。それより早く外に出して」

「認められません。お姉様はまだここに居て貰わないと困りますもの」


箸で白米を持ち上げ、千鶴の口の前に出す。拒む千鶴だが、口に無理やり押し込まれる。

空腹が限界だった千鶴は吐き出すことなく咀嚼して飲み込む。