玲華は全く相手にしてくれない凪一に怒りを覚える。しかし、ここで横暴な態度で歯向かえば計画はすぐに水の泡となる。

ならば少しでも相手にして貰えるように尽くしていこう。玲華はその日から完璧に家事をこなしていった。



ーー嫁いでから3日の時が過ぎた。

相変わらず相手にされない玲華。食事も凪一とは別に食べ、仕事に行くのを見送ろうとしたら足速に家を出ていってしまう。

今まで自分の思い通りにしかならなかった玲華にとっては初めての経験。全く相手にされないストレスが日に日に溜まっていく。

千鶴のように力でねじ伏せて言うことを聞いてくれる使用人はこの屋敷にはいない。凪一はずっと一人でここに暮らしてきた。

行き場のない怒りとストレスを発散すべく、一条家の屋敷へと足を運ぶことにした。

両親や使用人に見つからないようにこっそり忍び込み、自室に閉じ込めた千鶴の元へと向かう。


（あーもう。どうして凪一は一向に私を相手にしてくれないのよ！？）


地団駄を踏みながら廊下を進む。曲がり角に差し掛かると部屋の前で両親の声が聞こえてきた。


「玲華。もう3日よ？本当にお腹空いていませんの？」

「はい、お母様。食欲がありませんの」

「何があったかは知らないが、食事を取らなければ異能の力は弱まってしまう。何か気がかりのことがあれば話をきくぞ？」