チャンスが巡ってきたのは19歳になった時。父から久世家からの縁談の話を聞かされた。

ようやく屋敷を出ることが出来る。玲華を毒に塗れた一条家から逃がすことが出来る…!

千鶴は準備を進めていく。身も心も限界だったが縁談の話のおかげで希望が見えてきた。

顔合わせの日を今かいまかと、日を数えて待ちわびる。


ーー縁談があると父から聞かされた時のこと。使用人としての仕事に戻る前に利政が幸恵と話しているのを聞くことになる千鶴。


「あなた。千鶴を久世家に嫁がせるなんて本気なの?」

「本気も何も、千鶴が屋敷から居なくなれば玲華を長女として組織に送り込むことが出来る。久世家とは先代からもとより縁談の話があったが、一人息子の凪一様は力がありながら組織貢献に興味がないらしい」

「まぁ。親不孝な息子だこと」

「それに凪一様は女嫌いで有名だ。千鶴などすぐに捨てられてしまうだろう。組織に貢献しない無能など、一条家には必要のない。玲華には組織と関わり深い異能者を婿養子として用意する。お前、このことは黙っていろ?いくら無能の家でも、敵にまわせば一族の危機だ」

「かしこまりましたわ。利政様」


(どこまで玲華を追い込むつもりなの?私が久世様に捨てられようとどうでもいい。私がなんとかしなくては)