千鶴は決意する。何があっても実の妹である玲華を守り続けると。

(玲華と二人で逃げ出すことは簡単。けど、その先は二人で生きていかなければいけない。まだ未成年の私たちを働かせてくれるところなんて限られている)

玲華には毒された環境から抜け出してほしい。千鶴は悩む。この事実を伝えるべきか否か。

まだ幼い千鶴たちには大人に対抗出来る力などない。せめて自分が成人するまでは玲華の傍で生き、一条家を一緒に出ようと考えた。

その為ならどんな事でも耐えられる。玲華の前では家族として傍にいたい。千鶴は玲華の前では笑顔でいた。

しかし、千鶴を下に見ていた玲華にとっては笑顔は鬱陶しいものでしかなかった。


「私の前で笑うな!この無能!!」


初めて妹に無能と言われて、その日は一晩中涙を流した。扇子で叩かれた頬の痛みなど気にする余裕もなく、辛い現実を息を殺して耐え抜いた。


それでも千鶴は諦めず、玲華と接し続けた。どれだけ暴言を吐かれようと、どれだけ叩かれようとその日が来るのを必死に…。