「経った一年でここまで成長するとは。無能な姉とは大違いだな」

優秀な妹と比べられて千鶴の心は深く傷ついた。異能がないだけで家族として扱われず、無能として扱われる毎日。

千鶴の心は日に日に衰弱していく。

初めは幸恵から気に入らないことがあると暴言を吐かれたり、時には暴力を受けたりしていた。

それを見て育った玲華も千鶴を見下しては掃除の邪魔をして、叱れば問答無用で殴られる。


(玲華、どうしちゃったの?私のこと嫌いになったの?)


お転婆だったけど、常に笑顔を絶やさなかった玲華が一年で変わり果てた姿に戸惑う千鶴。

そんな時、父の書斎である記述が書かれた記録簿を見つける。

それは千鶴が12歳の頃。利政から仕事で使う書類を探して欲しいと頼まれて、普段は立ち入ることを禁じられている書類へと足を運んだ。

頼まれた書類の中に埃をかぶった一つの記録簿を発見する。日付は10年前。千鶴がまだ2歳の頃だ。

人を居ないのを確認して千鶴はその記録簿に書かれていることを読む。するとそこには千鶴と玲華、2人の出生についての記述があった。

長女・千鶴、次女・玲華と書かれていた横には“養子”と記述されていたのだ。

衝撃を受けた千鶴はショックのあまり、記録簿を床に落としてしまう。


(お父様とお母様とは血の繋がりがない…?)