ーー当時に千鶴が10歳の時のこと。8歳の玲華は異能の力を目覚めさせた。

利政と幸恵は心の底から喜び、玲華の異能者としての教育が始まる。そして異能が目覚めことは今後ないと判断され、千鶴の教養は一切禁じられる。

以降、千鶴は一条家の使用人として屋敷での生活を始めることとなった。

千鶴は一条家の“汚点”、異能者として“無能”と、ことある事に言われるようになった。

使用人として働く千鶴は主に屋敷内の掃除、洗濯、時には玲華の身の回りの世話をしていた。

千鶴は生きるために必死になって働いた。他の使用人から仕事を教わり、少しずつやれることが増えてきた。

元々物覚えが良かった千鶴はあっという間に仕事を覚え、使用人たちからも頼りにされていた。

名家の長女に家事などさせるのは最初の頃は言語道断と思ってきたが、当主である利政に逆らえない使用人たちは命令に従うしかなかった。

使用人たちは千鶴にとって支えだった。屋敷の異常な方針を理解し、千鶴にはあまり孤独感を与えないようにしていた。

その頃、玲華は異能者として着々と成長し続けていた。異能が目覚めてから一年、利政の優秀な使いの者にも負けないくらいの力をつけた。