◇ ◇ ◇
(こんな事になるなんて……)
閉じ込められた千鶴は固く閉ざされた襖に背中をつけて座る。滅多に来ることのない妹・玲華の部屋には父から買い与えられた高級品の数々を目にする。
(玲華が好きそうな品物ばかりだわ)
着物も髪飾りも一級品の品々。けれど千鶴はそんな品々に目を輝かせることはなかった。
チカチカと反射してくる光に腹立たしくなっていた。それは決して羨ましいのではない。
(高級品を買い与えたところであの子は救われないわ)
千鶴は知っていた。両親は本当は玲華、もとより自分も愛してなどいないことを。
(あの者たちはいつまで偽りを演じていくのかしら?)
千鶴はもう一度、襖に触れる。
(玲華は久世様とこれから住む屋敷へ向かった頃かな?…息が苦しい。このような所、早く出ていきたい)
一条家のには負の感情が屋敷中を覆っている。屋敷そのもの、いや、一条家の者全てが怨霊なのだ。
常に異能者として上に立ちたいと利政と高貴な自分に酔っている幸恵、そしてそんな両親に毒されて育った玲華は同じように禍々しいオーラを身にまとっていた。
己の欲望の為ならどんな手段を使ってでも、上に立ちたい。一条家だけでなく、代々異能者の組織に貢献してきた家系なら誰もが身にまとっているだろう。
(いっそこのまま…玲華が幸せになってくれれば私はどうなってもいい……)
千鶴は静かに目を閉じる。まぶたの裏に映る景色は幼い頃の千鶴と玲華。
(こんな事になるなんて……)
閉じ込められた千鶴は固く閉ざされた襖に背中をつけて座る。滅多に来ることのない妹・玲華の部屋には父から買い与えられた高級品の数々を目にする。
(玲華が好きそうな品物ばかりだわ)
着物も髪飾りも一級品の品々。けれど千鶴はそんな品々に目を輝かせることはなかった。
チカチカと反射してくる光に腹立たしくなっていた。それは決して羨ましいのではない。
(高級品を買い与えたところであの子は救われないわ)
千鶴は知っていた。両親は本当は玲華、もとより自分も愛してなどいないことを。
(あの者たちはいつまで偽りを演じていくのかしら?)
千鶴はもう一度、襖に触れる。
(玲華は久世様とこれから住む屋敷へ向かった頃かな?…息が苦しい。このような所、早く出ていきたい)
一条家のには負の感情が屋敷中を覆っている。屋敷そのもの、いや、一条家の者全てが怨霊なのだ。
常に異能者として上に立ちたいと利政と高貴な自分に酔っている幸恵、そしてそんな両親に毒されて育った玲華は同じように禍々しいオーラを身にまとっていた。
己の欲望の為ならどんな手段を使ってでも、上に立ちたい。一条家だけでなく、代々異能者の組織に貢献してきた家系なら誰もが身にまとっているだろう。
(いっそこのまま…玲華が幸せになってくれれば私はどうなってもいい……)
千鶴は静かに目を閉じる。まぶたの裏に映る景色は幼い頃の千鶴と玲華。


