千鶴が逃げ出す前に襖を閉める玲華。閉めた襖に手を置き、異能を発動させる…!


「これで自力では出てこれない」


部屋一帯が異能の光に包まれる。千鶴が襖に手をかけた時には遅く、自力で開けることが出来なくなっていた。

玲華の異能は触れたものの機能を制限する規制術(きせいじゅつ)


「開けなさい!」


ドンドンと襖を叩くがビクともしない。


「お姉様にはここで私の代わりを務めてもらうわ」

「代わり?」

「今回の縁談、私が一条千鶴となって久世様と婚約するのよ。そうすれば異能者として頂点に立てる…!一条家は未来永劫、誰も逆らう事なんて出来ない」

「許されることだと思っているの?お父様やお母様が許すはずがない。あなたもよく理解しているはずよ」


(許しを得る時間なんて無駄よ。現にお父様はさっき反対されたもの)


「お母様が昔言っていたの。私とお姉様はよく似ている。だから私がお姉様に成り代わっても誰も気づかない。立派に演じてみせる」

「玲華!」

「私より幸せになるなんて、そんなの許さない。そう思うわよね、お姉様?喜んで。私が代わりに幸せになるわ」


玲華は部屋を離れた。千鶴の声を最後まで聞かずに、己の欲望を突き通すために。


ーー大広間には凪一と千鶴たちの父・利政、母・幸恵の姿があった。

襖が開き、千鶴が大広間に姿を現した。しかしこの人物は千鶴ではない。

姉である千鶴の部屋で父が用意した着物に着替え、目元にくすんだ色の目元色を加えて血色の悪さを作り出した。

凪一の前に正座し、深々と頭を下げる。


「久世様。お初にお目にかかります。一条千鶴と申します」


一条玲華が姉・千鶴の姿をしてこの場に現れたのだ。