「異能を持たぬ者はこの世界では無能も同じ。異能者として貢献することで初めて世間に認められる。異能が全てのこの時代で、無能が無意味なことを語らないでくださる?」


千鶴は黙り込んでしまった。


(ふん。いかに自分が無能か思い知ったようね。出しゃばりもいいところだわ)


「さっきから何の騒ぎ?」


2人の言い合いを聞きつけて、幸恵が大広間に駆けつけた。入るなり千鶴を睨みつける。


「お母様聞いてください。お姉様ったら、私が異能者として間違っていると言うんですのよ?」

「何ですって!?千鶴さん、貴女(わたくし)の玲華になんて無礼を!!」

「私は人を傷つけることは間違っていると申したまでです。玲華がやっていることは、いつか人を追い込んでしまう。誰かがその間違いを指摘しなければ、玲華自身が苦しい思いをしてしまいます…」


(私が間違っている?そんなはずはない。無能を教育するのは優秀な異能者として当然のこと。力でねじ伏せることで相手を完全に支配できる)


「玲華は無能に異能者としての常識を貴女に教えたまで。それを理解できない無能はこの世にいらないのよ!?」


幸恵は千鶴の顔に平手を打つ。転げ落ちた千鶴の髪を引っ張り無理やり顔を上げさせた。


「いいこと?一族の汚点である貴女は優秀な玲華の邪魔でしかないの。利政さんはそれを気にして嫁がせることを選んだ。捨てられることに感謝しなさい?」